「おやすみなさいフランシス」
- 作者: ラッセル・ホーバン,ガース・ウイリアムズ,まつおかきょうこ
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 1966/07/01
- メディア: 大型本
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よく眠る子どもで、昼寝は大好きだしこたつに潜り込んで本を読みながら眠ってしまうこともしばしばだったけれど、夜になってさあ眠りますよおやすみなさい、というときには「まだ眠たくない」と思っていた。眠る前に、あたたかくした一杯の牛乳をもらっていた頃のこと。
まだ遊んでいたいし本も読みたいし、おしゃべりもしたいし、大体弟は父と母と階下で眠るけれど、どうして私は二階でひとりで寝なきゃならないの、と思っていた。
おまけに階下からは、母と姉と弟の笑い声が聞こえてきたりするのだ。ずるいずるい、眠たくない。
だから降りていく。「のどがかわいたの」
だから降りていく。「楽しそうだなって」
だから降りていく。「ずるいずるい」
フランシスもミルクをもらって自分のベッドにもぐりこんだ後、天井の割れ目が気になるだの部屋に大男がいるだの、眠れなくて何度も両親のいるリビングに現れるのだけれど、何度めかのとき、彼らはテレビを見ながらケーキを食べていた。
夜中のケーキ!こんなにもときめく言葉があるだろうか。挿絵から推察するに、スポンジにジャムかクリームを挟んだごくシンプルなケーキと思われるのだけれど、さてその挟まれたジャムやクリームはなんだろう?
テレビを見ることは許されないが、フランシスはひときれケーキをもらう。
「フランシスが真夜中に食べていたケーキ」は何だったんだろうなあ。
プレーンの生地に、いちごジャム。あるいはブルーベリー。マーマレード。シンプルに生クリーム。
あるいはショコラの生地に、ココアクリーム。
シナモンの香りがしても美味しいかも。
ふかふかのケーキかしら、それとも、しっとりしたケーキ?
何にせよ、おかあさんの手作りだろうなあ。
姉から聞いた、ケーキの思い出の話。
兄と姉の幼い頃(私は姉と5つ離れている)はもっとずっと生活が苦しかったんだと思うんだけど、母が作ったクリスマスケーキはそれはそれは。泡立て過ぎたぼそぼその生クリームと、温州みかんが薄皮も剥かない房のままのっていたの。
いただきもののバタークリームのクリスマスケーキを食べながら、私は思わず笑ってしまったし、母もそうだったかしらと笑っていた、ような気がする。
そのケーキのことを考えると、若い両親の薄い財布や、姉のせつない気持ちやらで、いまではほんのり泣けてくる。
私たち姉妹はたくさんケーキを作るようになった。姉がシフォンケーキに熱中していたときには、私たちは何度も夜中にふんわり膨らんだケーキをほうばった。