おいしい本が好き

本の中の食べ物はおいしそうに見える。

「二ほんかきのき」

 

二ほんのかきのき (こどものとも傑作集 16)

二ほんのかきのき (こどものとも傑作集 16)

 

 

「うちの庭でとれたさくらんぼ」を給食時にクラスメートがふるまってくれたりだとか、友人宅の裏庭になるカリンズで作った果実酒は彼女のお祖父さんの好物だとか、そんな話を聞くたびに「自分の木がある」というのはいいだろうなあと思わずにはいられない。

季節ごとに花を咲かせ、葉を繁らせ、色の移り変わりを楽しみ、さわさわと葉を散らせた後には、空に向かって手を広げる幹が静かにそこにある。それが自分の過ごす場所のそばにあって、それを見つめ、見つめられながら暮らす。公園ではない、街路樹ではない、自分の家にある、というのがいいのだ。私のものであるということ。私と手を繋いでくれる自然が側にあるということ。あまくてみずみずしい実がなる、果物の木であれば、なおのこと、素敵。

 

甘い柿と渋い柿と、桃の木のある家の1年の話。

 

1月、冬の最中に兄弟は豊作を願って果物の木に「なりきぜめ」をする。

兄が「なーりそうか、きりそうか」と言いながら幹に鉈で傷をつける。

弟は「なりますなります、なったらおかゆをしんぜます」と言って粥を塗りつける。 

ja.m.wikipedia.org

「なりきぜめ」はこの字を書くのか、とこの度初めて知りました。なりきぜめ、やってみたいのです。今でもとてもとても。 

春には花を拾い、青い柿の実と葉っぱで人形を作り、夏には桃の実をもいで食べながら木陰のブランコを揺らしてあそぶ。桃の実の、甘そうなこと、みずみずしそうなこと!甘い柿が熟す頃にはもう秋も深まっている。

渋い柿が熟すのはそれから。渋い柿は背が高くて、梯子に登ってもてっぺんまでは届かないので、お父さんが高い枝に登って木を揺らして落とす。

もいだ渋柿は家族だけでなくご近所も総出でくるりくるりと皮を剥かれて吊るされて、白い粉のふくころには、あまいあまい干し柿ができあがる。

冬の間は「木守りの実」が残って、雪どけを待っている。この雪がとければまた次の、芽吹きと実りの季節がやってくる。必ずやってくる、季節とのやさしい約束。

 

庭に木を植えるなら、甘い柿と渋い柿と桃の木にしようと思っていた。

17歳のとき、果実過敏症になって、りんごと桃が食べられなくなってしまった。どんどんアレルギーが出る果物が増えていって、柿を食べても喉がちょっと痒くなるようになってしまった。とほほ。

以来生の果物が食べられないけれど、加熱するとなぜか平気になるので、桃はワイン煮にしている。柿も今度、焼いてみようと思う。

 

想い雲―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)

想い雲―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)

 

 

柿を焼くのはこの味です。

焼いてる柿は渋柿だけど、富有柿でもいいのかしら。